港町の星空を焦がす大たいまつ―。中土佐町の久礼八幡宮で28日未明、土佐三大祭りの一つとされる秋の大祭が幕を開け、五穀豊穣(ほうじょう)に感謝する「御神穀祭(おみこくさん)」が行われた。氏子らが力を合わせて運ぶ大たいまつから火の粉がはじけ、まちは熱気に包まれた。
旧暦8月14日の伝統行事。集落の神様を祭る土地の所有者「頭屋(とうや)」から大たいまつを担いだ一行が出発し、八幡宮で新米を奉納する。
燃えさかる炎で町を照らして進む大たいまつ(中土佐町久礼)
「雨がつきもの」と言われるこの日、西の空にふっくら膨れたお月さまが浮かんだ。今年の頭屋は父から大役を継いだ大坂地区の池田良宏さん(49)。午前0時、神事の後、長さ約6メートルの大たいまつに御神火が付けられた。「コロナで縮小の間に若い担ぎ手が減って…」。控えめの重さにするつもりだったが、松の木を詰めすぎて1トン超に。近くで1時間半ほど燃やしてから出発した。
若者たちが「おりゃおーりゃ、やりやんせー!」と太鼓で先導。観客を引き連れて練り歩き、他地域の若衆と打ち鳴らし合う「けんか太鼓」も続いた。だんだん短くなるたいまつの熱に歯を食いしばり、約2時間で八幡宮前の浜に着いた。
午前4時すぎ、残り1メートルのたいまつが豪快に境内へ放り出されると、参拝客は、無病息災のご利益があるという松の燃えがらを拾い集めた。久礼小4年の岸本青煌君(10)と浜崎匠君(10)は「町じゅうの人が来ちょった。来年はもっとたくさんけんか太鼓が出たらいいな」と笑顔だった。
29日には御神幸(おなばれ)が行われる。(蒲原明佳)
※こちらの記事は高知新聞社の記事内容から引用させていただいております